フリーライターの山田井ユウキです。僕はカメラ好きでして、機材をそこそこたくさん持っています。カメラやレンズだけでなくカメラバッグや三脚、ライティング用の照明機材などもけっこうな数、持っているのですが、そんな僕にとって気になるアイテムが登場しました。5月23日に発売された女性ファッション誌『CanCam』2017年7月号(小学館)の付録で付いてくる「魔法の自撮りライト」です。
昨今、若い女性の間で流行りまくっていると噂のInstagramですが、同号はそんなInstagramを大特集。「インスタの女王になりたい!?」をキャッチコピーに、今チェックしたいインスタグラマーやおしゃれに見えるポージングのコツ、フォトジェニックなグルメや日本各地のスポットまで紹介しているのだとか。付録として、同誌の2月号で「『自撮り』だけではなく、ありとあらゆる『撮影』に使える!」と人気を集めた付録「魔法の自撮りライト」の第2弾が付いています。
▽ 「CanCam」2017年7月号 | CanCam.jp(キャンキャン)
正直、自撮りとはまったく無縁なのですが、いったいどんなライトが付録で付いてくるのか気になって仕方がなかったのでCanCamを買ってきました。
ということで、今回は「カメラマニアの目線から見た魔法の自撮りライト」レビューをお届けします。
CanCamを買ったのは人生で初めてです。
こちらが付録の「魔法の自撮りライト」。何でも2月号の時は、人気すぎて完売したほどなのだとか。そのときはハート形だったのですが、今回は星形になったようです。よかった、さすがにハート形はおじさんにはちょっときつい。
この自撮りライト、単4電池(別売り)を2本入れて使います。この電池入れの部分がクリップ状になっていて……。
こんなふうにスマホにはさんで使います。
けっこうな存在感。
光らせるときは、このスイッチを押します。今回は光量を2段階で調整できるようになり、1回プッシュで光量小、2回目のプッシュで光量大、3回目のプッシュでライトが消えます。
露出を固定して光量を切り替えてみました。なかなかの明るさです。
星形の中に18個のLEDが入っています。色温度の切り替えなどはできません。暖かい色味にしたいときなどは後加工で色を調整する必要がありそうです。
では撮ってみましょう。本当はかわいいモデルさんに自撮りしてもらうのが理想なのですが、そんな知り合いはいないので自ら慣れない自撮りに挑戦します。
※注意! ここからはおっさんの自撮り写真しか出てきません!
警告はしましたからね?
では見ていきましょう。
昼間の室内、外は曇りで、窓からやわらかい光が差し込んでいます。撮影環境としてはそこまで悪くはない状況です。
まず、iPhoneで普通に撮ったのがこちら。
光源が右にあるので、左に影が出ています。顔にも少し影がありますね。
次に同じ条件で自撮りライトを使うと、
おお、左の影がかなり薄くなりました。顔の左右の明るさも近くなり、肌がフラットに写っています。
それから、目に入っているキャッチライトも、メインの光源が右から正面に変わったことで、しっかり両目に入っていますね。キャッチライトがあるだけで生き生きした感じが出ます。
陰影のあるなしは好みもあるので、どちらがいいとは言えませんが、ともかく自撮りライトの有無で写真が大きく変化することはわかりました。
ところで、ここでふと思ったことが。
iPhoneには、Retina Flashという機能があるんですよね。
これは、インカメラでの撮影時に画面全体を強く光らせることでフラッシュの代わりになるというもの。しかも、環境に応じて光量などを調整し、自然な肌色を再現するという優れものなのです。
もしかして、これを使えば魔法の自撮りライトはいらないのでは……?
……。
百聞は一見にしかず! 比べてみましょう!
↑iPhoneでノーフラッシュ。
↑Retina Flash。
↑自撮りライト。
いかがでしょう。また左右の頬の明るさに注目してください。今度の光源は左上あたりの照明なので、右に弱く影が出るのですが、フラッシュなしに比べるとRetina Flashはかなり影を消してくれています。
一方、自撮りライトで撮った写真はさらに影が薄くなっていて、影消し効果だけならRetina Flashよりも明らかに上ですね(首の影の濃さを見るとわかりやすいかも)。
ただ、Retina Flashが比較的自然な写りなのに対し、自撮りライトは背景も少し暗くなっていて、いかにも光を当てている感があります。一長一短といったところでしょうか。
ただし、光量がものすごく少ない場所となると話は別です。
たとえば、光がほとんどないような薄暗いバーみたいなところで自撮りする場合。
フラッシュなしではもうまともに写りません。
こういうときにRetina Flashを使うと、
こうなります。一応、光は当たっているので撮れるのですが、周辺まで光が回っていないことがわかります。かろうじて顔は照らせているかな、というレベル。さすがに光量不足が目立ちますね。
では自撮りライトだとどうか。
ご覧の通り、かなり明るくできます。左が暗いのは壁に対して斜めに立ってしまったせいなので気にしないでください。ともかく光量は圧倒的に自撮りライトの方が上だということがわかります。
実はこの違いが生きてくるのは、複数人で自撮りをした場合です。
たとえば二人で自撮りするとしましょう。
Retina Flashだとこんな感じで、中心部の明るさは悪くないものの、周辺は暗くなってしまいます。iPhoneのフルオートモードは画面全体の明るさのバランスをとろうとしますから、つまりRetina Flashで照らされた中央部分が明るくなりすぎないように露出を調整した結果、周辺が落ちたということだと思います。
簡単に言うと、複数人が入るくらいの画角で撮ろうとすると、Retina Flashの光は周辺まで届いていないということです。
では自撮りライトを使ってみましょう。
きっちり周辺まで明るい上に、影がほぼ消えています。周辺まで照らせる十分な光量があるということです。
そんなわけで、長々と自撮りを検証してきましたが、結論を出すと、
魔法の自撮りライトは光量不足の環境ならRetina Flashよりも頼れる。
と言えると思います。
ただし、Retina Flashの実力も相当なものでした。晴天の屋外などで単に影を薄くしたいだけなら、Retina Flashで十分でしょう。
もっとも、自撮りライトにはRetina Flashにはない長所が他にもあります。
まず、インカメラだけでなく、アウトカメラにも付けられるということ。たとえばマクロ撮影などで寄ると影が落ちてしまうのですが、その影消しに使えるでしょう。余談ですが、キヤノンがLEDライト付きのマクロレンズを発売していることからも、ライトがマクロ撮影に有効であることは証明されています。
それから、iPhoneと離してオフカメラストロボとしても使えること。しっかりライティングして撮影している人なら、これができることの良さはわかるはず。
もう一つ、Retina Flashは瞬間光ですが、自撮りライトは定常光という違いも重要です。
瞬間光は撮ってみるまでどんな写真になるかわかりませんし、暗い場所では画面がよく見えなくてポーズも決められません。
その点、自撮りライトは定常光なので、撮った写真がどんな仕上がりになるか確認しながら撮影できるというわけです。
ポケットに入るくらいのサイズで、スマートフォンに付けることができて、しかも十分な光量を持ったLEDライト。カメラマニアの目から見てもかなり有用なアイテムだと思いました。