美しくて、目立ちたがりやで、かまってちゃん――。京都で暮らす猫を紹介するシリーズ、第2回は喫茶とアンティークのお店「サイドロップ」の「アメちゃん」に会ってきました。
■ 「今日から、私がお母さん」
「女の子みたいな顔立ちですが、実は男の子。ニャーニャーとよく鳴く、おしゃべりな子です」
アメちゃんがいるのは、中心街から少し西に位置する西院。「嵐電」と「阪急」の駅のほぼ中間にお店があります。お店ではコーヒーはもちろん、オリジナルのドリンクや軽食、デザートなど、多彩なメニューを提供。おすすめのメニューは、自家製のハンバーグが乗った「特製手ごねハンバーグ丼さん」(税込800円)です。お店の奥には、アンティークのアクセサリーや雑貨が並びます。
「喫茶店巡りが好きで、落ち着けるお店を作りたかったんです」と話すのは、もともと古道具店を営んでいたという店長のケイコさん。友人のヒロコさんと一緒に2012年10月、「サイドロップ」をオープンしました。
2013年の夏、ケイコさんはずっと飼っていた愛猫「ポチ」を亡くします。26年7ヶ月と、とても長生きしたポチ。それまでも数え切れないほどたくさんの猫を飼ってきたケイコさんは「猫を飼うのは、ポチで最後」と誓います。しかし知人の猫に4匹の赤ちゃんが生まれ、ケイコさんに「1匹もらってください」と声が掛かります。同じ年の11月、生後3ヶ月のアメちゃんがやって来ました。当時の様子を、ヒロコさんはこう語ります。
「引き取った日の夜は、お母さんが恋しいのかずっと鳴いていて。店長に『明日も鳴いたら返そうか』と伝えたんですが、彼女は一晩中『今日から、私がお母さんやで』と言い聞かせていて。次の日には、ぴたっと鳴きやんでいました」
引き取る直前までお母さんのお乳を吸っていたことを考え、小さなアメちゃんを自分の胸の上に乗せて心音を聞かせながら寝かせたケイコさん。アメちゃんも安心したのか、次の日の夜からは自らケイコさんの胸の上に寝転び、すやすやと眠るようになりました。
「アメちゃんは、店長のことを本当のお母さんだと思っている。ずーっと後ろを付いて回るし、店長だけは抱いても嫌がらない。いたずらをしても、店長が叱ると言うことを聞きますね」
■ お店にいることは“仕事”だと思っている
アメちゃんは、店内奥にあるテーブル席のイスがお気に入り。アメちゃんの指定席にお客さんが座っていると、膝の上に乗ることもあります。ヒロコさんがお客さんに「よけましょうか?」と聞いても、だいたいは「そのままで大丈夫です」と返ってきます。
「お客さんの方が気を遣ってくださる(笑)。ぜんぜん人のことを怖がらないですし、甘えん坊だから自分から近付くんですよ」
いつもお店の中であっちへこっちへと動いているからか、とてもスリムなのに筋肉質。獣医さんが驚くほどの“やせマッチョ”なんだとか。最近のお気に入りごはんは、猫缶の“極上ささみ”です。
店内で決して爪とぎせず、台所にも絶対入らない。イスに乗ることはあっても、テーブルに乗ることはないそう。お母さんとじゃれているとき、どんなに夢中になっても絶対に爪は立てません。
ケイコさんは、これまで飼ってきた猫の中でも、3本の指に入るくらいアメちゃんは賢いと話します。
「家にいるとよくゴロゴロと鳴きますが、お店ではいくら撫(な)でても喉を鳴らすことはない。たぶん、お店にいることが“仕事”だと思っていて、プライベートの自分と使い分けているんじゃないかな」
お店の中から外を眺めるのが好きなアメちゃん。だいたいのことには動じませんが、近所で飼われているシーズー犬だけは苦手です。
ケイコさんに抱かれて、手をぶらーんと伸ばすポーズが落ち着くそうです。
■ アメちゃんが一番元気なのは水曜日
近ごろは雑誌などによく取り上げられるため、北は仙台から南は九州まで、全国各地からアメちゃんに会いに来るお客さんが後を絶ちません。ヒロコさんによると、先日も神奈川から新幹線に乗ってアメちゃんに会いに来た方がいたそうです。
「『京都観光のついでですか?』と聞いたら、『いえ、アメちゃんに会いに来たんです!』という方ばかりで。京都は“店猫”が多いから、いろんなお店を巡って猫に会っているんだと思います」
営業時間中はだいたいお店にいるアメちゃんですが、遊びすぎて疲れがたまるのか週末は2階にいることが多いそうです。定休日の次の日に当たる、水曜日が一番元気とのこと。時間帯は、夕方ごろがベスト。
その美しさと愛らしさから、お店に訪れる人をメロメロにするアメちゃん。取材中もカメラ目線をたくさんくれ、まるでアイドルみたいな猫でした。
京都の猫に会いに行く特集、過去の記事は以下でどうぞ。