太陽光パネルよりもサツマイモの方が、作り出すエネルギー量が多い……? 太陽光パネルによる発電量と同面積の土地で収穫したサツマイモの熱量を比較すると、サツマイモの方が多くなるという“芋論文”が、Twitterやはてなブックマークで注目を集めました。編集部ではこの話題の発端となったツイートの内容をもとに、論文を探しました。
■ サツマイモを一躍ヒーローにした“芋論文”とは?
▽ 太陽光発電と芋を比較した芋論文が話題 - Togetter
ムナカタ(@mu_nakata)さんが紹介した、“芋論文”と呼んでいる論文によれば、「サツマイモによるエネルギー」は、以下の利点があるそうです。
- 太陽光発電と比較して約4倍の熱量を生み出す
- エネルギー収率が良い
- CO2(二酸化炭素)を固定化できる
この論文名は、Togetterやはてなブックマークのコメント欄では明らかになっていませんでした。まとめに登場した「電力技術・電力系統技術合同研究会」の過去のプログラムを検索しても手掛かりはつかめません。そこで編集部では、同研究会を運営する一般社団法人電気学会に、論文の内容について照会。“芋論文”は、九州工業大学の西尾友佑さんらによる論文「壁面緑化による省・創エネルギー効果とデマンド抑制効果の定量評価」(2011年)であることが分かりました。
■ サツマイモは一石二鳥の優れもの?
同論文の実験では、人が住む空間の基本単位を想定した実証実験施設「Green Cube」を使い、「ガラス張り・無対策の状態」「サツマイモの葉を壁一面に這わせた状態」「住宅壁面で覆った状態」の3つを作り出しました。次にそれぞれの状態で、エアコンのオン・オフ時の消費電力の違いについて比較したところ、無対策の状態より、サツマイモの葉を這わせた方が省エネルギーの効果があることが示されました。
その実験後に収穫されたサツマイモのエネルギーをカロリーベースで算出。そして、サツマイモが生み出すエネルギーと、仮に同じ面積で太陽光発電モジュールによる発電が行われたと想定した場合の発電量を比較しました。
論文では壁面緑化の植物にサツマイモを選んだ理由について、「葉が大きく日光の遮蔽効果が期待でき、塊根として自らエネルギー蓄積を行う能力に優れているからである」と述べています。
この話題の発端となったムナカタさんは、サツマイモからエネルギーに変換する費用や設備投資などを考慮すると現実的ではないと指摘。さらに、論文では熱量のみ比較していることや仮定が不完全であることをツイートしています。
■ すでに発電事業にサツマイモを活用するケースも
▽ サツマイモ発電事業開始について | 霧島酒造株式会社(2014年8月)
元のまとめでは、宮崎県の霧島酒造がすでに、芋焼酎の製造過程で生じる「芋くず」や「焼酎粕」を資源としたバイオマス発電事業への参入を発表していたことも言及されています。サツマイモを使った発電事業は、国内初だそうです。
霧島酒造のサツマイモ発電への取り組みに対し、はてなブックマークのコメント欄には「サツマイモつおい」「夢ある」「面白い。うどん発電よりも確実性を感じる」「こういういろんな発電が生まれるといいなあ」などの反応が集まっています。
参考文献
- 西尾友佑, et al. "壁面緑化による省・創エネルギー効果とデマンド抑制効果の定量評価." 電気学会研究会資料. PE, 電力技術研究会 2011.80 (2011): 117-122.