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マンガの熱量を演劇で表現することはこんなにも面白い 舞台「弱虫ペダル」第8作目、総北新世代のスタートライン



舞台『弱虫ペダル』新インターハイ篇FINAL~POWER OF BIKE~

舞台「弱虫ペダル」――ファンの間で“ペダステ”との略称で親しまれている同作は、2012年2月にスタートした人気シリーズ。アニメの放送開始前に舞台化したという珍しいメディア展開で、ステージ上で繰り広げられる熱戦が回を追うごとに話題を呼び、瞬く間にファンを増やしていきました。

基本は原作通りに進んでいくものの、第2作「舞台『弱虫ペダル』箱根学園篇~眠れる直線鬼~」や第5作「舞台『弱虫ペダル』箱根学園篇~野獣覚醒~」のように、主役校・総北高校のライバルである箱根学園にスポットを当てたスピンオフ作品も上演。インターハイ3日目を描いた第6作「舞台『弱虫ペダル』インターハイ篇 The WINNER」や第7作「舞台『弱虫ペダル』IRREGULAR~2つの頂上~」では、卒業を控えた3年生が後輩へと思いを託していく様子が描かれ、物語としても、舞台としても一つの節目を迎えました。

主人公・小野田坂道をはじめとする1年生が2年生に進級する今作は、新キャストが10人も加わるなど、まさに“新世代”を感じさせる顔ぶれに。原作ファンから人気の高い手嶋純太や青八木一、葦木場拓斗といったキャラクターも登場し、5年目に突入した同作を新しいステージへと押し上げます。

小野田坂道を演じるのは、小越勇輝さん。前作「舞台『弱虫ペダル』IRREGULAR~2つの頂上~」から、初代の村井良大さんに続く2代目として同シリーズに参加しました。前作ではダブル主演の巻島裕介役・廣瀬智紀さんと東堂尽八役・北村諒さんが2人で座長を務めましたが、今作では小越さんが主人公かつ座長という立場に。過去には、「ミュージカル『テニスの王子様』」2ndシーズンで主人公・越前リョーマを約4年間演じるなど、話題作で座長を務めた経験もあります。

囲み取材では「新世代始動ということで、これまでつなげてきてくださった先輩たちの思いだけでなく、原作『弱虫ペダル』の中にいる先輩たちの気持ちも背負いながら、自分たちや次の世代(新入生)に熱を与えて、お客さんにワクワク・ドキドキを届けていきたい」とコメント。舞台「弱虫ペダル」に出演してきたキャスト、そして卒業していったキャラクターたちの思いを胸に走っていくと、それぞれの“次元”で「弱虫ペダル」を牽引(けんいん)し続けてきた先輩に触れました。

演出・脚本を手掛けるのは、かつては俳優・佐々木蔵之介さんも所属していた劇団「惑星ピスタチオ」(2000年解散)を旗揚げした西田シャトナーさん。奇抜な演出アイデアと役者のパワフルな演技を駆使して表現した「パワーマイム」と呼ばれる手法を取り入れるなど、臨場感のあふれる演出を得意としています。また“あらゆる物”をキャストが全身で表現するという手法も特徴で、自動販売機やドラム缶の中で燃える炎といった背景にある物だけでなく、時には自分の役以外のモブキャラクターもキャスト自身が演じます。

舞台「弱虫ペダル」の代名詞ともいえる、ハンドルだけで自転車を表現する演出もパワーマイムの一つ。キャストはこのハンドルを持ち、右から左へ、上から下へと、ステージを縦横無尽に駆け抜けます。手嶋純太役で初参加の鯨井康介さんは、稽古の感想について囲み取材で「周りから『あの舞台は大変だぞ』といろいろな声を聞きまして。実際に稽古場に入ってみて、これほど汗をかくのかと。着替えが2、3枚あっても足りないくらい“本当の汗”をかきました」と言及。その汗は本番中もとめどなく流れ、体力の限界に挑むように足を動かし続けます。その気迫が原作の持つ熱や勢いを表すかのようで、気が付けば食い入るように目の前のレースを追ってしまう――この舞台を見ていると、次第に“観戦客”として客席にいるように思えるのです。

レースのシーンでは風を切るような照明の動きやBGMが加わり、本当に自転車で走っているかのようなリアリティーが生まれます。客席までも風を受けているように感じるのは、まさに五感を刺激される舞台ならでは。そこへ、多くのアニメ作品やアーティストに楽曲を提供しているmanzoさんの音楽が重なり、作品に新たな彩りを添えます。

舞台に設置された傾斜のあるスロープは、シーンによって山や峠などさまざまな役割に変化していく、同作には欠かせない舞台装置。主に動かすのは、パズルライダーと呼ばれるキャストたち。スロープのそばで常に待機している黒子的な立場ではなく、時にモブキャラクターを演じたり、場を盛り上げたりする。この舞台において重要な存在である。

シリーズ第8作目となる今作。新キャプテンとなった手嶋純太をはじめとする総北高校メンバーは、新チームとしてインターハイ連覇に向けて動き始めます。しかし、これまでチームを引っ張り続けてきた先輩の抜けた穴は大きく、自分自身の力不足を痛感するメンバーたち。そんな中、鏑木一差や段竹竜包といった新入生が続々と入部し、ライバル校の箱根学園や京都伏見もインターハイ優勝へ向けたスタートを切ります。

新たな体制でインターハイ連覇に向けて始動するという物語は、新キャストが多く参加する今作のカンパニーそのものにも通じるようです。これまで演じられてこなかった過去のシーンも盛り込みつつ、息つく暇もないほど見どころ十分なエピソードが凝縮された2時間20分。原作の印象的なシーンがたくみな演出で表現されており、「マンガの熱量を舞台化すること」の面白さをあらためて体験できる内容になっていました。

TOKYO DOME CITY HALLで上演された東京公演は3月6日で千秋楽を迎え、今後は福岡公演、大阪公演、神奈川公演と続きます。大千秋楽に当たる3月27日(日)午後5時公演は、全国の映画館でライブビューイングの上映が決定。スクリーン越しでも、ステージ上の熱戦を感じることができるはずです。上映劇場やチケットの販売スケジュールは、以下の特設ページをどうぞ。

舞台『弱虫ペダル』~箱根学園新世代、始動~ | 大千秋楽ライブビューイング開催!

舞台「弱虫ペダル」~総北新世代、始動~

(c)渡辺航(週刊少年チャンピオン)2008/弱虫ペダルGR製作委員会2014
(c)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/マーベラス、東宝、セガ・ライブクリエイション

<公演概要>
  • 東京公演:TOKYO DOME CITY HALL
    • 3月4日(金)~3月6日(日)
  • 福岡公演:アルモニーサンク 北九州ソレイユホール
    • 3月10日(木)~3月13日(日)
  • 大阪公演:オリックス劇場
    • 3月17日(木)~3月21日(月・祝)
  • 神奈川公演:KAAT 神奈川芸術劇場
    • 3月25日(金)~3月27日(日)
<キャスト>

小野田坂道:小越勇輝
今泉俊輔:太田基裕
鳴子章吉:鳥越裕貴
手嶋純太:鯨井康介
青八木一:八島諒
杉元照文:山本一慶
鏑木一差:椎名鯛造
段竹竜包:植田慎一郎
杉元定時:中村太郎
古賀公貴:輝馬

真波山岳:植田圭輔
泉田塔一郎:河原田巧也
葦木場拓斗:東啓介
銅橋正清:兼崎健太郎

水田信行:桝井賢斗
岸神小鞠:天羽尚吾
御堂筋翔:村田充

パズルライダー:一瀬悠、掛川僚太、伊藤玄紀、河野智平、村上渉

<スタッフ>

原作:渡辺航「弱虫ペダル」(秋田書店「週刊少年チャンピオン」連載)
脚本・演出:西田シャトナー
音楽:manzo
Twitter:@y_pedalstage

文: あおきめぐみ

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