「エヴァンゲリオン」シリーズの生みの親である映像作家・庵野秀明さんが代表を務めるカラー初の企画展覧会が、ラフォーレミュージアム原宿(東京都渋谷区)で始まりました。初展示を含む「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの原画や設定資料、「シン・ゴジラ」の雛型3種など、ファン必見の約300点が集結。開催前日に行われた囲み取材には庵野さんが出席し、10周年に対する思いや“これから”について語りました。
▽ 株式会社カラー10周年記念展 | 株式会社カラー
11月23日(水・祝)から11月30日(水)まで開催されている「株式会社カラー10周年記念展 過去(これまで)のエヴァと、未来(これから)のエヴァ。そして現在(いま)のスタジオカラー。」は、2016年5月に創立10周年を迎えた映像製作会社・カラーの歩みを振り返ることができる展覧会です。会場では、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズを中心とした貴重な資料などを数多く展示。原画に記された庵野さんや担当スタッフによる指示書きもそのまま残されており、どのように作品が生み出されていくかの過程を間近で見ることができます。
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「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズからは、2007年公開の第1部『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』、2009年公開の第2部『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』、2012年公開の第3部『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の原画や設定資料を約160点展示。宣伝物などに使用されたイラストの原画も初披露されています。
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開催に先駆けて行われた囲み取材で、庵野さんはカラーの10周年について「10年もってよかったです。こういうふうに(作品を)お披露目することができてよかった」とコメント。展示の内容を「うちの会社が10年やってきたことをぎゅっと詰めた感じ」と語り、作品そのものだけでなく「作品を作るまでの過程の面白さを楽しんでもらいたい」と同展の楽しみ方を説明しました。
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今年大きな注目を集めた映画「シン・ゴジラ」も、庵野さんが脚本・総監督として携わった作品。同展ではゴジラの第2形態・第3形態・第4形態の雛型を展示しており、3形態そろっての登場は今回が初となります。
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どういった経緯で雛型が作られたのかについて、庵野さんは「最初からCGで作るよりは、まずは絵にして立体物にして……と、何もないところからではなく、ちゃんと立体として存在するものをCGにしたかったんです」と回答。続けて「イメージとして描いた絵が先にあって、造形家・竹谷隆之さんが立体に落とし込んでくれた。今度はそれをCG制作の白組がCGに落とし込んで、画面に反映していく。最初は立体がほしいんです。これ、という正解があるのですごく良かった。実在するものがあったからこそ、ゴジラはCGで作っても大丈夫だったんです」と話し、雛型が指針として重要な役割を果たしていたことを明かします。
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また、作中でも印象的だったゴジラの形態変化については「東宝さんは最初、嫌がっていました。やっぱりゴジラはこういうものだというイメージがあったので、それを崩すのはちょっと……と」というエピソードもあったのだそう。しかし「そこはバンダイさんが『(商品を)3つ出せてうれしいです』と。ほらほら、これ人気出ますよ、と」とのやりとりも明かし、場を和ませます。
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10年という節目を迎えたカラー初の展覧会のタイトルでは、新劇場版として新たな世界観を生み出しているエヴァンゲリオン(エヴァ)が大きく打ち出されています。庵野さんは、このタイトルに込めた意味を「(エヴァは)代表作なので。『現在』はスタジオカラーのことです。スタジオカラーという『現代』が『過去』からエヴァを作り、『未来』のエヴァもスタジオカラーが作っていく」と提示します。
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エヴァの展示における見どころとしては「序、破、Qと徐々に絵の雰囲気やディティールも変化している。ほとんど絵で作っているので、絵の素晴らしさを見ていただければ。この絵が画面を構成する元になっています。原点に触れていただきたい」とコメント。さらに原画を描く上では「アニメーションの動きの元なので、動きそのものを大事にしている」と話し、絵を構成するレイアウトやシルエット、顔の位置も意識して制作していると説明します。
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「顔の位置って大事なんですよ。例えば3秒の場面があった場合、お客さんが真っ先に見るのは顔なんです。顔を認識した後に全体を見るので、まず目線誘導は顔、目ですね。画面の中のどこにキャラクターの目があるかを探して、目を確認したらその目が何を見ているか、という意識が働きます」と、絵を描く上でのポイントも明かしました。
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クリエイターと経営者を10年続けてきた庵野さん。この10年間で最も苦労したのは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の後だったそうで、「正直、何も作れなくなりました。自分の中のものを使い切りました」と当時の心境を吐露します。
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これからの10年でやりたいことについては「面白いものを作り続けたい」とコメント。続けて「10年先にも、今存在しているいろいろな資料を残していきたいと思っています。『過去』も残したいし『未来』にもつなげたい。そのために『現代』が大事なんじゃないかなと思っています」と語り、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の新作については「頑張っています」という一言を残しました。
庵野秀明さん
「株式会社カラー10周年記念展 過去(これまで)のエヴァと、未来(これから)のエヴァ。そして現在(いま)のスタジオカラー。」の入場料は500円(税込)。開場時間は午前11時~午後9時です。来場特典として、庵野さんのインタビューなどが収録された小冊子「株式会社カラー10周年記念冊子」が全員にプレゼントされます。詳細は展覧会サイトをどうぞ。