慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科の舘暲特任教授らのグループは、肌触りのような細やかな触感を離れた場所へ伝達する技術を開発しました。この技術は、遠隔医療や災害救助のほか、疑似体験での教育、エンターテイメントなどの分野にも応用が期待されるとのことです。
▽ http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2012/kr7a4300000arrbs.html
「テレイグジスタンス」は、遠隔地にいるかのような感覚で別の空間での作業やコミュニケーションが可能となる技術です。舘教授らは、1980年から「テレイグジスタンス」の概念を提唱し、感覚を伝達する技術の研究を進めてきました。研究の実証として開発されたのが、「TELESARシリーズ」と呼ばれるロボットです。2011年に発表したTELESAR Vでは、物を握った際に指先に力を感じさせたり、温度を伝えたりすることに成功しています。しかし、絹布の“サラサラ感”やデニムの“ゴワゴワ感”などの触感の違いは伝達できていませんでした。
これまでのTELESARシリーズロボット
今回の研究では、ロボットの指先に搭載する触覚センサーと、操縦者の手に装着するグローブ型の触覚ディスプレイを新たに開発。圧力・微細振動・温度の3要素から、物体表面の凹凸による触感の伝達に成功しました。TELESAR Vに統合された同技術は、米ロサンゼルスで開催されるCGとインタラクティブ技術に関するイベント「SIGGRAPH2012」で、8月5日(現地時間)から展示されます。
この技術で手元の感覚に頼らざるを得ない作業や状況判断が可能となることから、今後は医療や製造、災害対策といった分野への貢献が期待できるとのことです。さらには遠隔地に行かずとも身体的な体験ができることから、コミュニケーションやエンターテイメント、教育などへの活用も期待されています。
テレイグジスタンスの展開例
YouTubeでは、テレイグジスタンスシステムを備えたロボットが実際に動いている様子が公開されています。
▽ http://www.youtube.com/watch?v=KoC1iTOmYTg