人の行動や運動における“やる気”は、“報酬”の量に強く影響を受けることが知られています。しかし、脳のどの部位が報酬の量を予測し、やる気に結びつけるのかよく分かっていませんでした。自然科学研究機構生理学研究所(以下、生理研)は11月22日(木)、“報酬”の量を予測し、“やる気”につなげる脳の仕組みを発見したと発表。米科学誌「NEURON」の11月21日号に研究成果が掲載されています。
▽ 報酬の量を予測しやる気につなげる脳の仕組みを発見/自然科学研究機構 生理学研究所
▽ ScienceDirect.com - Neuron - The Primate Ventral Pallidum Encodes Expected Reward Value and Regulates Motor Action
生理研の橘吉寿助教と米国国立衛生研究所・彦坂興秀博士の研究グループは、サルに対して特定の合図の後、ある方向に目を動かすように覚えさせ、うまくできたらジュースを与えるという実験を実施。すると、予測される報酬(ジュース)が大きければ大きいほど目を動かすスピードは速くなり、このとき大脳基底核の一部である「腹側淡蒼球」の神経活動も大きくなったそうです。また、腹側淡蒼球の働きを薬物で停止させると、報酬と目の動きのスピードとの関連は見られなくなりました。
橘助教は「これらの結果から、腹側淡蒼球が、“報酬”を予測し、“やる気”を制御する脳部位の一つであることが分かりました。これによって、報酬に基づく学習プロセスの理解が進むことが期待されます」とコメントしています。
教育やリハビリテーションの場では、“やる気”が学習意欲やその習熟度を高めるといわれており、今回の研究によってその仕組みの理解が進むと期待されています。これまでにも生理研では、「褒められると上手になる」を科学的に証明し、社会的報酬と運動技能の習得の関係を研究しています。
▽ 人は「褒められると上手になる」ことを科学的に証明 生理研などの研究で - はてなニュース