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地下の書庫に興奮! 近未来的な建物に膨大な資料を所蔵する国立国会図書館 関西館


■ 甲子園球場グラウンド4個分の広大な図書館

関西館は、京都市内から電車・バスを使って約1時間ほどの京都府相楽郡精華町にあります。広大な土地に、ガラス張りの外観が目を引く巨大な建物がたたずみます。地上4階、地下4階建てで、延べ床面積は約6万平方メートル。甲子園球場のグラウンド4個分ほどの空間に、図書、雑誌・新聞、アジア言語資料など、合わせて約1200万点を所蔵しています。設計は、建築家の陶器二三雄さんが担当しました。

関西館が出来たのは2002年。「東京本館の書庫がいっぱいになってきたため大きな収蔵施設が必要だった」「当時飛躍的に伸びていた情報技術を用いたサービスを国立国会図書館でも開発・提供するための拠点を作る」という2つの理由から、オープンに至りました。

エントランスは1階部分にあります。階段を下り、地下1階の閲覧室に向かいます。奥にはエレベーターも。

階段を下りた先に見えるのは、利用者登録を受け付けるカウンター。利用者登録を行うとカードが発行され、館内の資料が閲覧できます。登録の失効は発行から3年後。閲覧室への入室および資料の利用ができるのは満18歳以上です。ただし18歳未満でも、調査研究に必要な場合は個別に相談に応じています。

カウンター横にある発行機では、当日利用カードの発行も可能。ただし、当日利用カードでは書庫資料の閲覧はできないとのことです。

発行されたICカードをゲートにかざして入館します。退館時、資料が未返却の場合やコピー代金が未払いの場合などは、ゲートが開かないそうなのでご注意を!

B5サイズ以上の不透明なバッグ、音響機器、カメラなどは館内への持ち込みができないため、あらかじめ入り口付近にあるコインロッカーに預けます。筆記用具や貴重品などは身に着けるか、備え付けの透明ビニールバッグに入れます。

閲覧室の手前には、エッグチェアを置いたスペースも。中庭の緑を眺めながら休憩できます。

■ 参考図書やアジアの資料が多く並ぶ閲覧室

閲覧室の面積は約4,500平方メートル。ワンフロアで、入り口から向かって右側が「総合閲覧室」、左側が「アジア情報室」となっています。閲覧室には約12万点の資料が置かれており、手に取って参照できます。

総合案内カウンターでは、目的の資料の探し方や図書館の利用方法など、利用者からの質問に応じる「レファレンスサービス」を行っています。

総合案内カウンターの横には、関西館の利用法など「資料を探すヒント」が書かれた配布物を設置。初めて訪れた人や図書館に慣れていない人を手助けします。

閲覧室にある資料は、辞書、事典、年鑑、名鑑、統計、図鑑など参考図書がほとんど。閲覧室にない資料は、地下の書庫に保管されています。書庫資料の閲覧申し込みは、閲覧室のコンピューターから国立国会図書館の蔵書検索サービス「NDL-OPAC」にアクセスして行います。

書庫資料の受け取りは、こちらのカウンターで行います。右手は複写サービスのカウンターです。

閲覧室にある座席は約350席。間仕切りがあるため、調べ物に集中できます。一部の機器使用不可エリアを除き、全席でパソコンの持ち込みが可能です。

こちらの棚には、国内外のさまざまな新聞が置かれています。国内は全国紙や一部の地方紙・業界紙、海外はアメリカの「ニューヨーク・タイムズ」やフランスの「ル・モンド」といった主要紙をそろえています。海外の新聞は、国によっては到着が遅れがちとのことです。

新聞は最新1年分を原紙で所蔵しています。原紙での所蔵期間を過ぎたあとは、縮刷版、マイクロフィルム、データベースでの閲覧になります。

 

博士論文のカード目録が収納された大きなカードケース。現在はすべてデータ入力されているため、カード目録を引かなくても「NDL-OPAC」で検索できます。

 

赤い印が付いているのは「アジア情報室」の本棚。中国や韓国をはじめ、東南アジア、インド、北アフリカなど約60ヶ国の資料を所蔵しています。現地の言語で書かれたものから日本語、欧文の資料まで種類はさまざま。韓国のスポーツ紙や台湾の生活情報誌、タイの日本語新聞など、アジア各国の新聞・雑誌も所蔵しています。

ビルマ語はデータ化されていないため、アジア情報室のカード目録はまだ一部現役。扱う資料の言語が多岐にわたるため、職員も辞書を引きつつ、資料の管理を行っているそうです。

閲覧室の外には、たくさんの資料を閲覧する人や、視覚に障害がある人に音声資料などを利用してもらうための研究室もあります。グループでも個人でも利用可能。使用する際は総合案内で申し込みます。

4階には、食事を楽しめるカフェテリアも。大きな窓から自然光が降り注ぎ、ゆったり過ごすことができます。作業に疲れたら、ここでひと休みしてみてはいかがでしょう?

■ いよいよ書庫へ……

関西館は、延べ床面積の8割が地下に埋まっています。広大な地下に広がるのは、3層の書庫。奥行きは約130メートルで、ワンフロアでサッカーのフィールド約1面分の広さを誇ります。地下の書庫は資料の品質管理のため、年間を通じて室温と湿度に大きな変化がないよう調整されています。目安は、室温22度、湿度55%。訪れた日は外の気温が高かったため、空気がひんやりとしていました。

地下での保管は、日の光を紙に当てないで済んだり、地震の際に地上より揺れが小さかったり、温度・湿度が管理しやすかったりと、さまざまなメリットがあるそうです。

 

書庫はあまりに広いため、位置を感覚でつかめるよう、本棚が色分けされています。南側の本棚は黄色や赤など暖かい色、北側の本棚は青や緑など冷たい色で塗装。東西は、色のグラデーションで区別しています。

閲覧室で書庫資料の請求があると、各階の書庫に設置されたプリンターから申込書が印刷されます。内容を担当者が確認し、該当する資料を探し出します。資料が利用者の手にわたるまでの時間は約15分。

  

地下2階の天井付近にはレールが設置されており、閲覧室と書庫を行き来する赤い台車が走っています。静かな書庫に、台車の走る音が響いていました。

 

こちらは人が入るスペースをなくし、収納効率を高めた「自動書庫」の設備。半透明のコンテナに資料を縦に入れ、必要なときだけ呼び出します。利用頻度が比較的低いものを自動書庫に収納しています。関西館では、約2万8千個のコンテナが保管されているとのこと。ベルトに乗せられたコンテナが自動で動いていく様子は、機械式立体駐車場を思わせます。

閲覧室の図書は、国立国会図書館分類表に基づき分類・配架されています。しかし膨大な資料を保管する書庫は、確保するスペースが計算しづらいため、分類に関係なくどんどん詰めて収納しているそうです。しかしすでに8割以上のスペースが埋まっており、新たな書庫を作る計画が始動しています。将来的には、東京本館より多くの資料を持つ施設となる見込みです。

関西館では今回紹介したサービス以外にも、Webを通じて資料のコピーを申し込む「郵送複写」や、図書館に対する資料の貸出など、来館せずに資料を利用できるサービスを行っています。

国立国会図書館の仕組みや役割などを詳しく知りたい方は、下記の記事もどうぞ!

100年後も読めるように――未来に資料を残す、国立国会図書館の役割 - はてなニュース

国立国会図書館 関西館

  • 住所:京都府相楽郡精華町精華台8-1-3
  • 開館時間:午前10時~午後6時
  • 休館日:日曜、祝日、年末年始、第3水曜日

関西館では、書庫などが閲覧できるガイドツアーを実施しています。18歳未満でも参加可能。ぜひご参加を!
関西館|国立国会図書館―National Diet Library

文: タニグチナオミ

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