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100年後も読めるように――未来に資料を残す、国立国会図書館の役割

京都 学び インタビュー


■ 週刊誌も時刻表も保管しています

国立国会図書館は、国内の資料を網羅的に収集し、国民の文化的資産として永く保存する「国立図書館」と、立法府に所属し国会のための調査・情報提供を行う「国会図書館」の2つの機能を兼ね備えています。現在日本にある国立国会図書館は、東京本館(東京都千代田区)、関西館(京都府相楽郡)、国際子ども図書館(東京都台東区)の3施設からなり、すべて合わせて約4000万点の資料を所蔵しています。数字だけではピンときませんが、例えば大阪府立図書館の所蔵数は、中央図書館と中之島図書館を合わせて330万点。 街の図書館や大学図書館とは大きく規模が違います。

国立国会図書館の所蔵資料数が多い理由は、「納本制度」にあります。納本制度は「国内の出版物は一定の部数を国立国会図書館に納めなければならない」という制度で、国立国会図書館法で定められています。

向井さん「街の図書館は、書庫スペースの問題から、購入した資料をすべて保存しておくことが難しく、廃棄することもあります。しかし、国立国会図書館は、“未来に資料を残す”という大きな目的がある。よく『週刊誌やマンガも取っておくんですか?』と聞かれるのですが、もちろん、取っておきます。時刻表も、電話帳もです。資料の価値を未来の人にも判断してもらえるように、網羅的に保管しています。例えば江戸時代の浮世絵や浮世草子も、今でこそたくさんの人が研究していますが、当時は軽く扱われたものだったと思うんですよね。そう考えると、資料を残すというのはやるべき大切な仕事なのだと」

国会図書館としての役割は、国会の審議に必要な調査を行うこと。年間で3万5千~4万5千件ほど寄せられる議員からの調査依頼に回答します。また、今後審議で取り扱われるであろう事象を先回りして調査し、刊行物としてまとめています、最近の例では、集団的自衛権や介護保険制度改革などについて調査したとのこと。これらは、インターネット上でも公開しています。

■ Webサービスに力を入れる国立国会図書館

国立国会図書館は、所蔵資料のデジタル化やアーカイブ化など、“電子図書館”としてのサービスを提供しています。特に大きなサービスが「国立国会図書館デジタルコレクション」。図書や雑誌、博士論文、官報など243万5千点がデジタル化され、アーカイブされています(2014年6月時点)。著作権の保護期間が満了および権利処理が完了している48万点は、Web上で公開されています。

2014年1月には、国立国会図書館に来館しなければ見られなかったデジタル化資料のうち、絶版などの理由で一般的には入手困難な資料を、全国の図書館に送信するサービスを開始。参加している図書館は、北海道から沖縄まで249館で、対象の資料は131万点に上ります(2014年6月時点)。

向井さん「デジタルコレクションにアーカイブしている資料は、公開に当たり権利処理が必要ですが、デジタル化自体はOKでもWebでは公開できず、国立国会図書館の施設内でしか閲覧できない資料がたくさんありました。せっかくの貴重な資料を見ていただけないのは残念ですし、利用したい方がわざわざ国立国会図書館まで足を運ぶのは不便。最寄りの図書館でデジタル化資料を見ていただけるように、多くの図書館にこの送信サービスに参加していただけるよう、努力していきたいです」

また、Web上で楽しめるサービスとして「電子展示会」を公開しています。国立国会図書館が所蔵しているユニークな資料に解説を添え、Web上の“展示会”として紹介しています。3月には、江戸の名所を描いた錦絵を紹介する「錦絵でたのしむ江戸の名所」を公開しました。

国立国会図書館では紙の資料の保管だけではなく、デジタル化にも取り組んでいます。なぜデジタル化が必要なのか。理由を向井さんに尋ねました。

向井さん「資料は、紙質が悪かったり、頻繁に利用したりするとボロボロになってしまいます。しかしデジタル化して、デジタルデータを優先的に利用していただくことにすれば、紙資料については劣化や損傷を防ぎながら保存することができます。また、デジタルデータは、図書館に送信することも、著作権処理が終了すればWeb上で公開することもできる。利用方法の幅を広げられます」

■ Webサービスを活用して、資料を探してみよう

膨大な資料から目的のものを探す際に便利な、国立国会図書館のWebサービス。「どういったWebサービスがあるのか」「どう使えばいいのか」といった疑問に応えるため、職員の武田和也さんが主なWebサービスを使いながら、関西館の蔵書の探し方などを教えてくれました。

<NDL−OPAC>

NDL-OPAC

国立国会図書館が所蔵する資料の目録および雑誌記事索引が対象のデータベース。和洋図書や雑誌、新聞、電子資料、古典籍資料などが検索できる。

武田さん「マンガ家の手塚治虫さんが医学博士号を所持しているのはご存じですか? NDL-OPACでは、博士論文の書誌情報も検索できます。検索結果の画面には、貸出状況や保管場所などを記載。日本の博士論文は主に、学位授与大学と関西館に所蔵されており、関西館で所蔵する約58万点のうち、約14万点はデジタル化されています。手塚さんの博士論文はもちろん、ノーベル賞受賞者や各界で活躍されている方の博士論文なども保管しています。ほか、関西館の特徴的な資料群として、国内外の規格や科研費報告書といった科学技術関係の資料、アジア関係資料が挙げられます」

<歴史的音源>

歴史的音源

1990年初頭~1950年ごろに国内で製造されたSPレコードや金属原盤などの音源を、歴史的音源アーカイブ推進協議会(HiRAC)がデジタル化。HiRACがデジタル化した邦楽、民謡、落語、歌舞伎、クラシック、演説など約5万点の音源が、国立国会図書館のデジタルコレクションで聴取可能。愛称は「れきおん」。

武田さん「れきおんは、作品や作詞家、作曲家、商品番号などから検索できます。例えば、与謝野晶子が自作の短歌を朗読した音声や、2014年に100周年を迎えた宝塚歌劇の「パリゼット(二)すみれの花咲く頃」の音声などが聴取可能です。Webで公開されているものは著作権が切れた約1,000点のみですが、れきおんの配信提供サービスに参加している図書館では、当館の施設内でしか聞けない音源も聞けます」

<近代日本人の肖像>

近代日本人の肖像 | 国立国会図書館

電子展示会のひとつ。近代の日本を形成した政治家、官僚、軍人、文化人などの肖像写真を紹介。

武田さん「福沢諭吉や坂本龍馬、板垣退助、夏目漱石など、テレビや教科書でよく見かける偉人の肖像写真が閲覧できます。出身地や生没年月日、人物の解説なども併記されています」

国立国会図書館 関西館の“行ってみたレポ”は下記からどうぞ。
地下の書庫に興奮! 近未来的な建物に膨大な資料を所蔵する国立国会図書館 関西館 - はてなニュース

文: タニグチナオミ

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