京都市美術館(京都市左京区)で9月27日(日)まで開催されている「ルーヴル美術館展」に行ってきました! 同展では農民の仕事や男女の恋愛など、“人々の暮らしの様子”を描いた「風俗画」を特集。ヨハネス・フェルメールの「天文学者」は初来日を果たしました。この記事では、会場の様子から見どころまでを一気に紹介。鑑賞券のプレゼントもあります。すでに東京展を訪れた人も、おさらいとしてチェックしてみてください。
▽ http://www.ytv.co.jp/louvre2015/index.html
京都市営地下鉄東西線・東山駅を出て10分ほど北に歩くと、平安神宮に続く巨大な赤い鳥居が現れます。その鳥居のちょうど東側に、ルーヴル美術館展の会場である京都市美術館があります。周辺には京都国立近代美術館や京都市勧業館・みやこめっせ、京都市動物園など、京都の主要な文化施設が集まります。
■ 西洋絵画では虐げられた風俗画がテーマ
1933年に設立された京都市美術館では、これまでにも何度かルーヴル美術館の企画展が開催されていました。過去の企画展は西洋絵画を時代ごとに区切った特集だったそうですが、今回はルーヴル美術館が所蔵する風俗画のコレクションに焦点を当てた展覧会です。83点の作品が、以下の8つのパートに分かれて展示。同展は2月21日から6月1日まで、東京・国立新美術館で開催された巡回展です。
- プロローグⅠ:風俗画の起源
- プロローグⅡ:絵画のジャンル
- 1章:労働と日々 ーー 商人、働く人々、農民
- 2章:日常生活の寓意 ーー 風俗描写を超えて
- 3章:雅なる情景 ーー 日常生活における恋愛遊戯
- 4章:田園の風景 ーー 日常生活における自然
- 5章:室内の女性 ーー 日常生活における女性
- 6章:アトリエの芸術家
西洋絵画では、古代史や神話の知識が必要になるような物語を描いた「歴史画」が最も評価され、人々の日常を切り取った風俗画は研究される機会が少なかったそう。ヨーロッパでも、風俗画のみを取り上げた企画展は少ないそうです。ルーヴル美術館の館長であるジャン=リュック・マルティネズさんも「これまでにないアプローチ」だとコメントしています。
左から、リュバン・ボージャン《チェス盤のある静物》17世紀前半/ル・ナン兄弟《農民の食事》1642年/クロード・ロラン《夕暮れの風景》1639年(?)/フランソワ・デポルト《狩人としての画家の肖像(自画像)》1699年/シャルル・ル・ブラン《キリストのエルサレム入城》17世紀
入り口から少し進んだ場所にある「プロローグⅡ」では、歴史画・肖像画・風景画・風俗画・静物画が1作品ずつ列挙されています。当時最高位とされた歴史画から最下位の静物画まで、それぞれの特徴が一目で分かります。
■ 当時の生活風景が垣間見えた
1章は、商人や農民、家事を務める人々の日常がテーマ。2章には、風俗的な場面を歴史画のように描いた作品が並びます。お祭りでだまし合いをしていたり、ただ仕事をしていたり、当時の人々が持っていたユーモアや倫理観のようなものが伝わります。
左:マリヌス・ファン・レイメルスウァーレに基づく《徴税吏たち》16世紀/右:アドリアーン・ファン・オスターデ《書斎で仕事をする商人》17世紀
どの作品もどこか謎めいた意味が込められていそうに見えますが、風俗画は難しい美術史の知識がなくても楽しめる作品が多いです。「晩鐘」や「落穂拾い」を描いたジャン=フランソワ・ミレーや、「民衆を導く自由の女神」を描いたウジェーヌ・ドラクロワなど、著名な画家が描いた作品も展示されています。
左から、セバスティアーノ・リッチ《サテュロスと農夫》1720-1730年ごろ/ダーフィット・テニールス2世《トランプ遊びに興じる人々のいる衛兵詰所での聖ペテロの否認》1646年/ジャン・ミシュラン《旅籠屋で休息する兵士たち》17世紀/ウィリアム・ホガース《オックスフォードの放蕩者》、〈放蕩者一代記〉より 1733年ごろ
左:アブラハム・ブルーマールト《冬の寓意》1625-1630年ごろ/右:ジャン=バティスト・グルーズ《割れた水瓶》1771年
あまり高尚でないといわれる風俗画ですが、一般の人々にはその分かりやすさから支持されることが多いようです。美術史に詳しくない私でも、当時の画家が何を描きたかったのかを理解でき、親近感が湧きました。
■ フェルメールの初来日作品も
2章の最後には、初来日となるヨハネス・フェルメールの「天文学者」を展示。日本の着物のようなものを着た男性が、アストロラーベと呼ばれる天体観測用の機器や書物を前に研究している様子が描かれています。光を白い粒のように描くなど、フェルメールならではの光の描写を見られます。
この作品は一時期、ドイツの政治家であったアドルフ・ヒトラーが所有していた過去があるとのこと。絵画の裏にナチスの印を意味する鉤十字があるそうなのですが、会場では確認することができません。ルーヴル美術館を離れることがほとんどない作品の1つだそうで、この機会を逃せばもう日本では見られないかもしれません。
ヨハネス・フェルメール 《天文学者》 1668年
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF - DNPartcom
■ 風景画の中の風俗画
4章では、17世紀以降に描かれた風景画の中でも、特に「田園的・牧歌的風景」を描いた作品を取り上げます。その中でも狩猟を描いたものは、風俗画とも呼べそうなほど人々の営みを描いた作品が多いそうです。シャルル・パロセルがダイナミックな象の様子を描いた「象狩り」や、いくつかのレイヤーで狩りの様子を描いたアンニーバレ・カラッチの「狩り」、人間も自然の一部だと考えたリアリズム(写実主義)の画家、ジャン=バティスト・カミーユ・コローの「水汲み場のブルターニュの女たち」などが見られます。
左から、ニコラ・ランクレ《狩りの食事》18世紀/ジャン=オノレ・フラゴナール《嵐》、または《ぬかるみにはまった荷車》1759年ごろ/ペーテル・パウル・ルーベンス《満月、鳥刺しのいる夜の風景》1635-1640年ごろ
アンニーバレ・カラッチ 《狩り》 1585-1588年ごろ
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Gérard Blot / distributed by AMF - DNPartcom
■ “ありのまま”を描こうとした画家たち
5章は、鏡の中の自分に見入ったり、化粧をしたりする“ありのままの女性”を描いた作品を展示。展覧会を締めくくる6章では、画家自身が多くの時間を過ごした「アトリエ」に焦点を当てています。
左:テオドール・シャセリオー《風呂からあがるムーア人の女性》、または《ハーレムの室内》1854年/右:ジュゼッペ・マリア・クレスピ《蚤をとる女性》1720-1730年ごろ
ここで展示されている作品は、歴史画や肖像画のような主流な手法や構図などを保ちつつも、実際には女性の心理や画家の思いを描いたものが多いです。中でもジャン・シメオン・シャルダンの「猿の画家」は、画家を猿に例えて描き、古典作品を“猿まね”している芸術家を風刺したユーモアのある作品。風景画や同展のテーマとなっている風俗画に見られるような“自然に基づく描写”をおろそかにする、当時の美術教育をからかっているようです。
左:ジャン・シメオン・シャルダン《猿の画家》1739-1740年ごろ/右:アレクサンドル=ガブリエル・ドゥカン《猿の画家》、または《アトリエの情景》1833年ごろ
■ カタログやお菓子など、オリジナルグッズも勢ぞろい
▽ http://www.ytv.co.jp/louvre2015/goods/index.html
ミュージアムショップでは、オリジナルのトートバッグや切手シート、クリアファイルを販売。展覧会カタログには、フェルメールの「天文学者」が表紙に大きく掲載されています。展示作品の画像と解説に加え、国内外の学芸員・研究員が風俗画をテーマに書いた6つの論文を収録。価格は2,500円(税込)です。
ほかに気になったのは、代表的な展示作品が描かれたパッケージに包装されたスペインの焼き菓子「ポルボローネ」。京都の銘菓「おたべ」で知られる美十が作ったもので、紅茶味・塩味・レモン味・ココア味の4種類を販売しています。崩れないうちに「ポルボローネ」と3回唱えれば、幸せが訪れると伝えられているそうです。
ミュージアムショップで販売されている一部の商品は、日本テレビのオンラインストアでも購入できます。
■ 「サモトラケのニケ」のレプリカも!
ルーヴル美術館展のPRのため、同美術館が所蔵する彫像「サモトラケのニケ」のレプリカが、京阪電鉄・京橋駅(大阪府大阪市)改札に展示されています。同作品は出展されていませんが、ルーヴル美術館と日本テレビのパートナーシップの象徴として制作されました。
ほぼ原寸大だそうで、大阪方面からルーヴル美術館展に来るときに見ておくことをおすすめします。京橋駅での展示は、6月30日(火)の午前中までです。
京橋に勝利の女神が舞い降りた!
ニケ像の修復作業を支援してきた日本テレビとルーヴル美術館のパートナーシップの象徴として、先日まで六本木の東京ミッドタウンに展示していたニケ像(複製)が、京阪電鉄京橋駅に!
※6/30午前中まで展示予定 pic.twitter.com/4pZkXE7puS
— ルーヴル美術館展2015京都 (@louvre2015kyoto) 2015, 6月 3
■ イベント詳細
ルーヴル美術館展 日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄
- 開催期間:6月16日(火)~9月27日(日)
- 会場:京都市美術館
- 開館時間:午前9時~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
- 9月19日(土)、9月20日(日)は午後8時まで開館
- 休館日:月曜日
- 7月20日(月・祝)、9月21日(月・祝)は開館
- 入場料
- 一般:1,600円
- 大学生・高校生:1,100円
- 中学生・小学生:600円
■ 鑑賞券を5組10名様にプレゼントします!
※募集は終了しました。ご応募、ありがとうございました。
「ルーヴル美術館展 日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」の鑑賞券を、抽選で5組10名様にプレゼントします。応募方法は、この記事をTwitter連携ではてなブックマークに追加し「プレゼント欲しい」とコメントするだけ! 詳しくは、下記の応募要項をご覧ください。
応募要項
- 応募期間
- 2015年6月24日(水)から2015年7月1日(水)24時まで
- 賞品と当選人数
- 「ルーヴル美術館展 日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」京都展の鑑賞券を5組10名様
- 応募方法
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- 当選発表
- はてなにて厳正な抽選を行います。当選発表は発送をもって代えさせていただきます。
- 賞品発送
- 当選者様にははてなよりメールをお送りし、送付先情報(送付先住所、受取人氏名、電話番号)をお聞きします
- ※プレゼントの発送は日本国内に限らせていただきます
- ※期日までに当選者様からのご返信がない場合は、再抽選の上、繰り上げ当選者様を決定いたします