読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

編集もこなすハイブリッドな“お土産屋”を目指す 京都・浄土寺の「ホホホ座」に行ってきた

京都 カルチャー 暮らし インタビュー



ホホホ座

ホホホ座・浄土寺本店は、バス停「錦林車庫前」で下車し、少し歩いたところにあります。南禅寺や平安神宮と銀閣寺を結ぶルート上に位置します。松本さんが営む古書と雑貨の店・コトバヨネットが入るハイネストビルの1階に、山下さんが営むガケ書房が移転してきました。

白川通りを一本入った住宅街に、年季の入った白い建物が現れました。描きかけの看板の奥には、本が立ち並ぶ様子が見えます。ホホホ座は、1階と2階が別々の店舗として独立しており、それぞれ山下さんと松本さんが運営します。

1階の店舗を担当するのは山下さん。店内には以前のガケ書房の面影があります。

ガケ書房時代から使っている棚には書籍や雑貨が並び、隅々まで何が置いてあるのか見て回りたくなります。関西の作家が制作したリトルプレス、京都に関するガイドや写真集なども取りそろえていました。店内では「私はホホホ座の食料部みたいな感じですね。2014年5月に左京区で開催されたイベントの時に焼き菓子を置かせてもらったのが始まりです」と語る、コウガメさんの手作りクッキーも販売されています。


新刊やリトルプレスがずらり

すべての商品を手に取ってみたくなります

ホホホ座・尾道店コウガメの店主のコウガメさん

コウガメさんは、4月15日(水)に広島・尾道のアパート「三軒家アパートメント」で「ホホホ座・尾道店コウガメ」をオープンしました。同店は、「尾道空き家再生プロジェクト」に参画して運営されます。コウガメさん手作りのクッキーや雑貨、リトルプレスを中心に取り扱うそうです。

Untitled

浄土寺本店では、1階の店舗を出て階段で2階へ上がります。奧に進むと、1階とは雰囲気の違う空間が広がります。元・コトバヨネット店主の松本さんが担当する2階は、古書や生活雑貨を販売。入り口には“10円均一”の古書が雑多に置かれ、店内には古書や陶器を中心とした雑貨が所狭しと並びます。ホホホ座のオープンに合わせて、配置もリニューアルしたそうです。


アパートの一室という感じです

入り口横の「10円均一コーナー」

「ホホホ座は書籍や雑貨を販売しますが、本職はあくまで編集と企画です」と語る松本さん。ホホホ座がオープンした4月1日には、小学館から書籍『わたしがカフェをはじめた日。』が発売されました。同書の内容やホホホ座の全貌、電子書籍、リトルプレスなどについて、松本さんと山下さんに伺いました。

山下賢二さん(左)と松本伸哉さん(右)

■ 最初は酒場のノリでした

―― ホホホ座のメンバーが出会った経緯についてお聞きしたいです。

松本 2013年にあるお寺で開催されたイベントで、ユニットを組んで何かやろうと集まったのがきっかけなんです。その時は目的もなくて、もっとぼんやりしてました。ただ単に個人商店の店主が集まっただけでしたね。

加地さん(左)、山下さん(右上)、松本さん(右下)<撮影:下條ユリ>

山下 実際に結成したのは、出町柳にある飲み屋です。酒場のノリってあるじゃないですか。「何かやろーや!」みたいな。グループ名も冗談で考えて。ただ、その時は何をするかは決まってなかった。

―― 各メンバーの役割はありますか?

山下 僕と松本さんが、主に編集業務をしています。ホホホ座のお店も、僕たち2人がメインでやっています。早川さんがデザイン担当で、加地くんはあいづち担当ですね。加地くんは、古書とレコードのお店「100000tアローントコ」(京都市役所横)の経営を続けています。

京都 100000t アローントコ | 古本、レコード、CDなど高価買取致します。

■ そのまま放っておいたら、危険だった

―― なぜガケ書房を移転することになったのですか?

松本 実はガケ書房のシンボルでもあった、外壁の石垣がそろそろ寿命で。そのまま放っておいたら、本当にガケ崩れを起こしていたかもしれない(笑)。

解体作業中のガケ書房

山下 何年か前にその外壁を担当した工務店の方が来てくれたんですが、その時に「もうやばいよ」と言われました。松本さんからは「こっちに来ないか」という話もあって、タイミングが重なったんです。流れに乗って、トントン拍子でしたね。

―― 再スタートの地として、京都のこの場所を選んだ理由は?

松本 家賃が安いからですね(笑)。それが最大の理由です。単なる住宅地ですし、商業地区でもない。でもこの地域は観光ルートでもあって、特に桜や紅葉のシーズンだと人が増えます。ただ、この地域を意識的に盛り上げようとか、そういうことはあまり考えてないです。「場所」というものは自然に出来上がっていくのが一番長続きすると思うので。

山下 実はガケ書房より、ここの方が人が通る頻度が高いんですよ。ガケ書房は表通りだったんですけど、人通りが少なかった。地元の人とガケ書房が目当ての人だけでやっていた感じなんです。こっちはそうじゃない流れがいっぱいあって面白いですね。移転して良かったと思っています。

■ たまたま本が多いだけの「お土産屋」

―― ホホホ座の商品はどういう意図で選んでいるのですか?

山下 ガケ書房のスタイルを残していきますが、ホホホ座は制作グループなので、何かを作る行為を増やしたいですね。イメージは「やけに本が多いお土産屋」なんですよ。何かを買って帰る場所というのは、どんな商品があっても「お土産屋」といえます。ホホホ座のオリジナル商品の比重を少しずつ増やしていきたい。卸もする予定です。


CDやレコードも取り扱います

コウガメさん手作りのクッキーとジャム

松本 2階は本に関して言えば、古書で、仕入れは買い取りが中心です。ですのでこちらが置きたい本を意図的にそろえることはできないのですが、ガケ書房の時からある、一般の方に棚を提供する「貸し棚」には、出店者の個性が出ます。店をやっている側としても面白いし、参考になりますね。

山下 雑貨は作家ものが中心ですが、1階と2階ではテイストを変えています。ホホホ座のオリジナル商品は、定期的に新しいものを販売していく予定です。

―― この場所が求めているもの、それに合う本はどういうものだと考えますか?

山下 客層は、ガケ書房時代はあまり見なかった年配の人と小学生ぐらいの子供が増えました。だからそれに合うような本、例えばNHKテキストや大河ドラマの副読本、アンパンマンの絵本なども、ニーズがあれば置いていきたいです。本当に買う人がいればちゃんと用意します。それをどう見せるかが、僕の役割だと思っています。

―― お店のデザインでこだわっているところは?

松本 ここはもともとギャラリーだったので、ほとんど触ってないです。パーテーションを付けたぐらいかな。そのままほぼ居抜きで作りました。早川さんはあくまで編集部のデザイナーなので、店舗のデザインに関しては何もしていません。店の外壁は、画家の下條ユリさんに描いていただきました。

子供向けの絵本やおもちゃもちらほらと

店の外壁には、画家・下條ユリさんが描いたホホホ座のシンボルが

■ “おしゃれなカフェ”の現実を紹介したかった

―― ホホホ座が企画編集した『わたしがカフェをはじめた日。』が小学館から出版されました。内容について教えてください。

山下 京都でカフェを始めた女性のインタビュー集です。丁寧やおしゃれという概念でくくられがちな“理想のカフェ店主”という世界感を入り口にしながら、本当はこういう世界があるんだよ、ということを見せたかった。理想は見せかけで、実は誠実な毎日があることも伝えたかったんです。インタビューする店は松本さんと2人で決めました。選んだ基準は、女性で切り盛りされていることと、店主が自分の店を明確にイメージできていることでした。表紙や中身の手描きのイラストは、すべて早川さんによるものです。

松本 最近は写真と簡単な情報だけで紹介する、見た目重視ばかりのいわゆる“カフェ本”が多いですよね。そういった生活提案型の本にありがちな、安易にライフスタイルをファッション化するような内容にはしたくなかったし、そのような風潮に対するアンチテーゼも含めたかった。僕らは本屋をやっているので、どんな本が売れるのかもなんとなく分かる。それらを踏まえて、自分たちが納得できるような内容のものを作りたかったんです。カフェ店主たちの物語をなるべく丁寧に紹介しようと思いました。


『わたしがカフェをはじめた日。』(小学館)

表紙や中身のイラストはすべて早川さんによるもの

―― なぜ女性なのでしょうか?

山下 男性は武勇伝を語りたがるんですよ! 僕らも男なので、その気持ちがよく分かります。なので今回はあえてそういうものを排除して、フラットに紹介したかったんです。女性にインタビューすれば、より現実味が出ると思ったんです。

―― 次回作の予定はありますか?

松本 出版社の「ミシマ社」と1冊作ります。内容は、京都以外の場所から京都に来て、何らかの表現活動やお店を始めた人にインタビューをします。性別は関係ありません。

■ 実店舗にいるからこそ、見えることがある

―― 以前、山下さんは電子書籍について懐疑的だとお聞きしました。今あらためてどう思いますか?

山下さんが過去に制作したリトルプレス『京都の音楽家案内』も並べられていました。京都で活動する音楽家を紹介しています

山下 僕はまだピンと来ないですね。否定的ではないんですけど、現場として全く感触がありません。最近やっとスマートフォンを使い始めたんですけど、電子書籍は読んでないです。やっぱり僕にとって、2次元はデータなんです。いくらそこに小説が書かれていても、それは電子データだとしか思えません。書籍という単語は、紙を綴(と)じた状態で構成されているもののことを指すと思っています。だから電子書籍は、また別物なんです。電子書籍が増えたからといって、読書をする人口が増えるとは思えません。

松本 電子書籍については詳しくはないけど、僕は全然良いと思います。表現の多様性は必要だと思っていて、方法は何でもいいからとにかく作る人が増えるのは良いことだと思っています。同人誌や携帯小説など、自費出版の世界は昔からありますよね。それが紙なのか電子書籍かという違いだけです。紙の本を1冊作るということは、コスト的にもやっぱりハードルが高いんです。幅広い人に見てもらおうと思うなら、電子書籍の方が良いかもしれないですね。親は子供にオーガニックで健康的なものを食べてほしいと思っていても、子供はそんな思い通りにいくものでもなくて、体に悪そうなお菓子も大好きじゃないですか。それと似ている。あまりこだわりすぎないようにしています。

―― Webストアのみでリトルプレスや古書を販売するお店もあります。そのことについてどう思いますか?

ホホホ座のWebストア

松本 実店舗は必要だと思っています。情報は店にいる方が分かりやすいんですよ。僕らが実店舗にいるのは、本来の仕事である編集業に役立つからなんです。パソコンの前にいるだけではやっぱり分からないことも多いと思います。

山下 『わたしがカフェをはじめた日。』を作るとき、「京都」「女性」「カフェ」という3つのキーワードが柱にあったんです。そのキーワードは現場にいて、売れる本や客層を見てるからこそ分かることだと思うんですよ。店で得られた知識で本を編集し、それを買っていただくというサイクルが出来上がればいいですね。

ホホホ座の遠方販売のページ

■ リトルプレスの流行は落ち着いたのかなと思ってます

―― リトルプレス(ZINE)の現状について教えてください。

山下 僕はもうリトルプレスの流行は落ち着いたのかなと思ってます。あっても打ち上げ花火のような、やりっぱなしのものが多いイメージですね。もちろん、それはそれで面白いんですけどね。TwitterなどのSNSで、言葉と思い出を共有する機会が増えたことが原因かもしれません。

松本 やる人は何も言われなくてもやり続けますよ。その人たちをこちらから盛り上げたり、支援したりする必要はないと思ってます。

―― ホホホ座の近くで、おすすめの場所はありますか?

山下 ここの近くだと、川を渡ったところにあるおにぎり屋「青おにぎり」とか、植物を販売する「田中美穂植物店」。喫茶店兼アトリエ「甘夏ハウス」や雑貨店「モアレ」もあります。あとは新丸太町にある、お昼はカフェで夜は飲み屋の「みず色クラブ」ですね。『わたしがカフェをはじめた日。』の特典冊子でも紹介しましたが、彼女たちの言葉の裏にある姿勢が信頼できる感じがするんです。

みず色クラブ入り口のネオン

松本 みず色クラブはアーティストの女性3人で経営されていて、それぞれの個性が出てて面白いんですよ。お店もDIYで作っていて、入り口にはネオンもあって。僕は遊びで店をやる人は嫌いなんですけど、意外とああいう店の方が長続きするんじゃないですかね。自分たちの創作活動のためならお店を辞めることも厭(いと)わないけれど、手探りで迷いながらやっている感じはしない。本当の意味での新世代だと思います。

山下 あの店が続けば、きっと伝説の店になると思います! 「みず色クラブ」をインタビューした『わたしがカフェをはじめた日。』の特別版は、ホホホ座とメンバーの店にしか置いていないので、ぜひお店で買ってください。

みず色クラブ (@mizuiroclub) | Twitter

■ 目指すのは、あらゆる世代が出入りする「イオンモール」

―― 今後のホホホ座について一言お願いします。

松本 あくまでもイメージですが、「イオンモール」的なものを目指しています。個人商店にとっての仮想敵というイメージが強いですが、あらゆる世代の人が訪れて楽しんで買い物ができます。衣食住と文化的なものがすべてそろっていて気軽に行ける店、というのは理想型だと思います。

山下 企業のスタイルという意味ではなく、そういう場所作りですよね。いろんな人が出入りできる場所を目指したいです。

松本 あと近くに安楽寺さんというお寺があるんですが、そこでイベントをやっていきたいと思っています。お寺っていうのは、文化芸術のパトロンでもあるんですよね。そういう活動が、この場所を盛り上げていくことにつながるかもしれませんしね。

―― ありがとうございました!

ホホホ座・浄土寺本店

  • 営業時間
    • 1階(新刊書・雑貨など):午前11時~午後8時
    • 2階(古書・雑貨・事務所など):午前11時30分~午後7時
  • 住所
    • 〒606-8412 京都市左京区浄土寺馬場町71 ハイネストビル1階/2階
  • アクセス

ホホホ座・尾道店コウガメ

  • 営業時間
    • 正午~午後6時
  • 住所
    • 〒722ー0031 広島県尾道市三軒家町3-26 三軒家アパートメント202
  • アクセス

▪︎ 今後のイベント情報

金子山 ワイワイワールド!in 京都「ホホホ座でスススライドやるんだな。」

  • 日時:2015年4月18日(土)午後8時くらいから
  • 会場:ホホホ座・浄土寺本店1階
  • 入場料:前売り1,000円・当日1,200円(ホホホ座で使える500円の金券付き)
  • 予約方法:前売りご希望の方は「お名前・電話番号・人数」を明記の上、件名を「4/18金子山」として「hohohozazaza@gmail.com」まで

今日 | 金子山 写真EXPO

ICHI New Album 『maru』 Release Japan Tour 2015

  • 日程:2015年5月11日(月)
  • 時間:午後6時30分開場、午後7時開演
  • 会場:京都・安楽寺(京都市左京区鹿ケ谷御所ノ段町21)
  • 出演::ICHI / 吉田省念&etc
  • 料金:予約2,000円・当日2,500円
  • 予約・問い合わせ方法:メールでの予約は「お名前・電話番号・人数」を明記の上、件名を「イチライブ」として「1kai@hohohoza.com」まで。電話での予約・問い合わせは075-741-6501(ホホホ座1階)まで

*会場周辺に街灯がなく暗いので、懐中電灯などお持ち願います。

ICHI | official site

BIG O Project in ホホホ座

  • 日程:4月28日(火)雨天決行
  • 時間:昼くらいから
  • 会場:ホホホ座前ガレージ
  • 料金:自由料金(プリント代)
  • 概要:Patagonia×Naomi KAZAMAによるオーガニックコットン啓蒙(けいもう)のためのライブ・シルクプリント・プロジェクトがホホホ座にやってきます。画家・下條ユリらがデザインしたホホホ座オリジナルデザインをその場でプリントします。Tシャツなどのボディは持参していただいても結構です(あらかじめプリントが入っていてもその上から刷れます)。無地のTシャツ、トートバッグ(共にオーガニックコットン)は実費で販売もします。

Naomi KAZAMA

山本精一 個展&ライブ

  • 日程:7月16日(木)~7月末
  • 会場:安楽寺

原田郁子(クラムボン) ライブ&トークショー

  • 日程:未定(夏頃を予定)
  • 会場:安楽寺

わたしがカフェをはじめた日。

わたしがカフェをはじめた日。

文: 文月聡

関連エントリー