国立天文台は11月6日(木)、大型電波望遠鏡「アルマ」が、視力2,000相当の解像度で「おうし座HL星」が誕生する現場の撮影に成功したと発表しました。今まではガスの雲に覆われて中が見えませんでしたが、その奥の「塵(ちり)の円盤」をはっきりと撮影しています。これほどの高解像度で撮影されたのは、今回が初だそうです。
▽ http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/pressrelease/201411067466.html
アルマ望遠鏡は複数のパラボラアンテナを組み合わせて1つの望遠鏡とする「電波干渉計」で、アンテナの間隔を離せば離すほど解像度が向上します。10月24日、過去最大のアンテナ展開範囲15kmで試験観測が行われ、その際に約450光年先にあるおうし座HL星の観測に成功しました。
観測された際の解像度は「0.035秒角(1度の約10万分の1)」で、人間の視力に換算すると「2,000」に相当。目で見える光の波長や紫外線、近赤外線の一部を扱うハッブル宇宙望遠鏡の解像度を上回るそうです。
星は、宇宙に漂うガスや塵の雲の中で誕生します。しかしその場所は密度の高いガスや塵に覆われているため、従来の観測対象であった「可視光」や「赤外線」などでは中を見通すことができませんでした。アルマ望遠鏡が観測する「ミリ波」「サブミリ波」はこういった物質に吸収されないため、観測が可能となったそうです。
撮影された画像には、星を取り囲む塵の円盤があります。その中には少なくとも3本の間隔があることから、円盤の物質を集めながら惑星が成長しつつある証拠だと考えられています。100万歳に満たない若い星の周りで、既に大きな惑星が形成されているのは想定外だったそう。この分野の研究に新たな可能性が生まれるとされています。
おうし座HL星へズームしていく映像