高校バレーを題材にしたマンガ「ハイキュー!!」(集英社「週刊少年ジャンプ」)の舞台、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“頂の景色”が、4月8日にシアターBRAVA!(大阪市中央区)で初日を迎えました。今作は、2015年に東京・大阪・宮城で上演された同名作品の再演。好評を博した初演の熱を引き継ぎつつ、新たな演出を加えパワーアップした内容で全31公演を駆け抜けます。試合の表現、マンガからキャラクターが浮かび上がるような演出――物語や登場人物の魅力を引き出す、新たな演劇の見せ方に迫ります。
▽ ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“頂の景色”
2012年から「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載されている「ハイキュー!!」は、自身もバレーボール経験者だという古舘春一さんが描く青春スポーツマンガ。これまでにも小説やゲームなど幅広くメディアミックスされ、2014年にはテレビアニメの放送がスタートしました。そんな勢いのある中で発表されたハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」の初演は、2015年11月~12月に東京・大阪・宮城の3都市で上演。豪華なキャスト・スタッフ陣は舞台ファンの間でも話題を呼び、チケットは“即完売”となったほか、大千秋楽のライブビューイングが当時の国内演劇史上最大規模に当たる全国92館で上映されるなど、熱視線を集めた公演となりました。
そして、初演の閉幕直後に発表された再演。初演の脚本から大きく変わった部分はないものの、映像や照明などの演出、個々が演じるキャラクターの動きには前作との違いが見られ、舞台全体の表現が進化していました。
座長を務める日向翔陽役の須賀健太さんは、ゲネプロ後の取材で「初演と変わらない熱を持って、全力でやるのみ」とコメント。影山飛雄役の木村達成さんは「再演では個々のドラマ性がよりくっきりと描かれています。自分たちもそこを重点的に作ったので、お客様も楽しめる。僕が変わることによって他のキャラクターの対応も変わり、烏野高校(日向や影山の通う高校)バレー部全体の動きも変わる」と、初演と比べて意識した演じ方の違いを語りました。
同作の代名詞でもあるプロジェクションマッピングは、再演でも健在。トスを上げる音やホイッスルを吹く音といったサウンドエフェクトも“マンガ的”に表示しており、背景だけでなく床にも映像を投映して雨が跳ね返る様子を表現するなど、映像と演劇を組み合わせた新しい試みに挑戦しています。このプロジェクションマッピングの使い方で最初に「面白い」と感じさせられたのは、冒頭にあるキャラクター紹介。原作のコマを使い、原稿用紙から登場人物が浮かび上がるかのようにキャストの動きと映像を融合させた演出は、ある意味“2.5次元”らしい見せ方でもあります。
また、再演では新たに“ライブカメラ”を導入。舞台上にいくつかのカメラを置き、特定のポジションにキャストが入ることで、キャストの“生の表情”がプロジェクションマッピングと組み合わさった映像としてスクリーンに映し出されます。須賀さんは今回のプロジェクションマッピングについて「いろいろと進化しているので、それに負けないようにさらにお芝居の熱を上げて全体的にパワーアップした公演にしたい」と話しました。
演出を手掛けたのは、関西の劇団「sunday(旧・劇団☆世界一団)」の代表を務めるウォーリー木下さん。脚本は劇団「柿喰う客」代表の中屋敷法仁さんです。ウォーリーさんは再演にあたり「原作をもう一度読み直して、演劇で再現するときにこの登場人物がどういうふうにこのシーンに立っているのかというのをもう1回みんなで考えて作り直しました。特に新キャストはこの作品を新鮮に捉えていたので、僕たちも刺激を受けました。より強い演劇になっています」と意識したポイントを語ります。
“強さ”については、青葉城西高校のバレー部主将・及川 徹役の遊馬晃祐さんも「(青葉城西は)初演からキャストが3人変わりましたが、さらに強いチームになりました。烏野高校に熱量で勝っていきたい」とコメント。再演からの新キャストである岩泉 一役の小波津亜廉さんも「及川を主体として全く新しいチームになったので、最後の最後まで、みんなを信じて突き進んでいきたいです」と意気込みます。また双方ともバレー経験者ということもあり、遊馬さんは「岩ちゃん(小波津さん自身)もバレーボール経験者ということが頼もしい。前回、経験者としてバレーの動きを教えていたのは僕だけだったんですけど、今回は岩ちゃんも一緒になって教え合ったので、青葉城西は強豪校っぽさが出たんじゃないかなと思います」と強さの増したチームの雰囲気についても明かしました。
限られたスペースの中でどう試合を表現するのかというのも見どころの一つ。同作にはバレーボールメーカーのモルテンとミカサが協力企業として参加しており、舞台上では本物のボールを使用するシーンもあります。しかし試合の見せ方として主軸になっているのは、照明やプロジェクションマッピングなどとキャストの動きを組み合わせた形。ウォーリーさんは「今どこにボールがあるのかを常に意識しろ」とキャストに話していたそうで、須賀さんも「ボールがどこに飛んでいるのか確認する作業を一つ一つやっていました」と試合の作り方を説明しました。
取材の最後に、須賀さんは自身が演じる日向のアピールポイントについて「運動量はこの舞台に出ているキャラクターの中で一番。誰かの話を聞くときは絶対にその人の近くまで行く勢いのあるところも日向くんの魅力の一つで、そこを全力で体現しています。彼が仲間とどう出会って、“頂の景色”を見に行くかというところも見どころです」とコメント。木村さんは「(影山のアピールポイントは)セッターというポジションを本当に愛しているところ。同じセッターである菅原さん(編集部注:猪野広樹さん演じる菅原孝支)にも負けない気持ち。セッター愛です」と語りました。
遊馬さんが「及川は飛び抜けて明るく、空気を変えられるような存在。チームの中を引っかき回しています」と話すと、小波津さんは「岩泉はそんな及川を止める存在でもある。チームの中ではいわゆるお母さん的なポジションでもあると思うので、どしっと構えて全体を見ています」と語り、バランスの取れたチーム力を見せました。
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“頂の景色”は、4月17日(日)まで大阪で上演。4月25日(月)からは東京公演が始まります。また5月8日(日)の大千秋楽公演は、今回も日本演劇史上最大規模に当たる全国93館の映画館でライブビューイング上映を実施。詳細は下記の特設サイトをどうぞ。
▽ ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」〝飛翔〞ライブビューイング
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“頂の景色”
(C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会
<公演概要>
- 大阪公演:シアターBRAVA!
- 4月8日(金)~4月17日(日)
- 東京公演:AiiA 2.5 Theater Tokyo
- 4月25日(月)~5月8日(日)
<キャスト>
■烏野高校
日向翔陽:須賀健太/
影山飛雄:木村達成/
月島 蛍:小坂涼太郎
山口 忠:三浦海里
田中龍之介:塩田康平
西谷 夕:橋本祥平
縁下 力:川原一馬
澤村大地:秋沢健太朗(新キャスト)
菅原孝支:猪野広樹
東峰 旭:冨森ジャスティン/■青葉城西高校
及川 徹:遊馬晃祐
岩泉 一:小波津亜廉(新キャスト)
金田一勇太郎:坂本康太
国見 英:有澤樟太郎
矢巾 秀:山際海斗(新キャスト)
渡 親治:齋藤健心
花巻貴大:金井成大
松川一静:白柏寿大(新キャスト)/■烏野高校 OB
嶋田 誠:山口賢人
滝ノ上祐輔:坂口慎之介/■烏野高校 顧問・コーチ
武田一鉄:内田 滋
烏養繋心:林 剛史<スタッフ>
原作 : 古舘春一「ハイキュー!!」(集英社「週刊少年ジャンプ」連載中)
演出 : ウォーリー木下
脚本 : 中屋敷法仁
音楽:和田俊輔
振付:左 HIDALI
制作:ネルケプランニング
監修:集英社(「週刊少年ジャンプ」編集部)
協力:一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会/モルテン/ミカサ
主催:ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会(TBS/ネルケプランニング/東宝/集英社/キューブ)
Twitter:@engeki_haikyu